●教育委員会が作成している学校の「集団行動指導の手引き」というものがあるんですね

先日ネットを見ていたら、愛知県教育委員会作成の「集団行動指導の手引き」(平成20年)というものを見つけた。平成20年なので、2008年版なので現在どの程度教育現場で使用されているのかは分からないが2008年時点では手引きとしてインターネット上に投稿されていたものです。

(まずはこちらを一読お願いします)
「集団行動指導の手引き」愛知県教育委員会
https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/3082.pdf

この手引きの中には、学校生活の中で児童生徒に集団行動の必要性を理解させて、基本的な行動様式を体得させることが重要とし、その具体的な指導方法が記載されています。

この手引き書を読んだら、本当に驚きました。

文章の作成元を隠してこの文を読んだら、軍隊かどこかの独裁国家の学校かと勘違いしても不思議ではありません。

以前、私は「前へならえ。右向け右」という日本の学校特有の指導習慣について見直しが必要と自分のブログに書きました。こちらの「集団行動指導の手引き」を読むと、私の認識が甘かったと痛感しました。

「前へならえ。右向け右」だけが慣習として学校で行われているわけでなく、ありとあらゆることに細かに指導要領が明文化され作成されていたのです。



●愛知県教育委員会の「集団行動指導の手引き」の内容

愛知県教育委員会の「集団行動指導の手引き」の中に記載されている行動様式は次のとおりです。
詳細は貼付のURLからご覧ください。
https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/3082.pdf
(抜粋)

1.姿勢
①気をつけの姿勢
②休めの姿勢
③腰をおろして休むの姿勢

2.方向転換
①右(左)への方向転換
②後ろへの方向転換

3.集合・整とん・番号・解散
①隊列の場合 (約2秒で号令での合図を完了する。ただし、小学校低学では3秒で完了してもよい)
②横隊の場合
③④縦隊・横隊の整列
⑤番号
⑥解散

4.列の増減
①2列横隊から4列縦隊
など

5.開列
①両手距離、間隔の開列
②片手距離、間隔の開列

6.行進

7.足踏み
①足踏み(約2秒で動令までの合図を完了する。)

8.礼
①立礼(予礼の合図がないので、前動作として、「気をつけ」をさせるとよい。)
②座礼

これらの行動様式が、写真、挿絵付きで事細かく記載されています。
ここまで事細かく、集団行動指導方法が定められているのはとても驚きです。やはり軍隊か独裁国家の学校の文章のように思えてしまいます。
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●学校でここまでの集団行動の規律や指導が必要なのか

この手引きのまえがきには、集団行動の指導が必要な理由が次のように説明されています。
(引用開始)
 児童生徒が学校生活を送る中で、集団で生活する場面は大変多く、児童生徒が安全に能率よく活動できるようにするために、集団の中で共通のきまりや約束を守る態度を身に付けることが必要です。特に最近では、地震等の自然災害や不審者の校内侵入等、緊急避難を要する場面も予想され、集団行動の重要性がより一層増していると言えます
(引用終了)


このような理由で、集団行動の指導に取り組まなくてはならないとのことです。
ここにあげられている集団行動の指導が必要な理由について反論させていただきます。

①ここまでの指導をしないと児童生徒が安全に能率よく活動できないのか?

集団の中で共通のきまりや約束は必要ですが、ここまで細かい軍隊と間違うような指導が必要な理由は説明されていません。「気をつけ」「休め」「行進」のような事がなぜ必要なのかもよくわかりません。児童生徒が安全に能率よく活動するために、ここまでの規律についての指導が本当に必要なのでしょうか。ほとんど不要だと思います。

②自然災害や不審者の校内侵入等、緊急避難を要する場面のために集団行動の重要性が高まっているのでしょうか。

緊急避難の準備のために、ここまでの集団行動の指導が必要なのでしょうか。それよりも緊急時の自分の身の守り方の指導をしたり、自分自身の判断力を養う指導をした方が効果的なのでは。緊急時に学校や先生の指示に従って行動したら絶対安全とは先生自身も自信をもって言えないでしょう。

①と②で反論したように、ここであげられた集団行動の指導が必要な理由は根拠が薄いと言わざるおえません。

どうもこの指導指針が「集団行動の指導が必要という」という考えや主張が先にありきで、後付けで理由を付け足したように思えてなりません。理由が明白でない以上、ここまでの集団行動の指導は不要ではないでしょぅか。

●「集団行動指導」が生徒の思考力を落として思考停止にしていないか

この指導手引きにそって指導を実践することで、「気をつけ」「右向け右」といった号令に従って行動できる事が児童生徒に求められます。教師の指示どおりにできればOKで、できなければNG、やり直しということになるわけです。

この時に、児童生徒は何を考えるでしょうか。
ほとんどの場合、特に何も疑うこともなく、何も考えずにやっているのではないでしょうか。

せいぜい考えても「先生の言うとおりにうまくやろう」とか「めんどくさいけれど先生がやれと言っているからやっとこう」ぐらい。まさしく学校が生徒を「思考停止」状態にさせているわけです。

まがりなりにも、民主主義と自由主義ということになっている21世紀の日本で、教育委員会や学校は「生徒を思考停止にさせて、号令に従って行動する人材を育成したいのでしょうか。」そのつもりが無くても、結果的に何か号令がかかったら反射的にそれに従ってしまうという人材を育成しているということになっているのではないでしょうか。

現在の日本は、民主主義と自由主義の社会ということになっているわけですから、個人が自分の頭で自由に考えて、よく話し合うことが大切なわけです。学校は「このような集団行動が必要なのかよく考えなさい」「号令に従うかは自分の頭でよく考えなさい」と教えるべきではないでしょうか。

余談ですが、民主主義の健全さを維持するためには、多くの人が投票することで自分の意思を表明することが大切です。日本では、国政選挙での投票率の低さ、また若者の投票率がさらに低いことが国政選挙の度に話題になります。

日本における投票率の低さは、学校時代に「前へならえ、右向け右」の号令に合わせて行動することを徹底的に叩き込まれた結果、いつの間にか自分で考えて選択しなくても誰かが決めてくれる。権力者や権威者の号令に従っておけば間違えないという意識が埋め込まれることも原因の一つかもしれません。(客観的な因果関係は証明できませんが)

学校の先生方が「前へならえ・回れ右」と号令をかけて生徒がそれに従って行動した時に、先生はよくできたと自分の指導力に満足しているかもしれません。しかしそれが結果的に日本の民主主義を弱体化させているかもしれないということを意識したほうがよいかもしれません。

●学校での過度の集団行動指導や過剰な校則はそろそろ大胆に見直すべき

小学校でも上記のような集団行動についての指導は見られますが、中学に入ると部活動や過度な校則も加わり、ますます軍隊式の集団行動指導が強まるようだ。これは私たちの子供の頃とあまり変わっていないか、もしくはさらに強化されている場合もあるようです。

現在の日本では、幼児教育分野は比較的自由度が高く、子供の自主性や思考力を伸ばすようなカリキュラムを取り入れた幼稚園や保育園もあります。また家庭でも同様に自主性や思考力を伸ばすように取り組んでいる場合も多いでしょう。

それが中学に入ると、多くの場合、制服、校則、過度の集団行動指導といった思考を停止させるような軍隊式の規律に子供がはめられてしまう場合がある。これでは、幼児教育から小学校にかけて、子供の自主性や思考力を伸ばす教育をしてきても、台無しになってしまいかねません。

私は、子供がそのまま自主性や思考力を伸ばしていけばよいと思うので、軍隊式の規律教育は不要だと思うのです。しかし、公立の中学校に通学すると多くの場合そのような環境になってしまい、選択肢が限られてしまうことも問題です。

不登校という問題も、軍隊式の規律教育が原因になっているケースも多いのではないでしょうか。それが原因であるならば、軍隊式の規律教育が憲法で認められている教育を受ける権利を結果的に妨害してしまっているとも言えます。

●最低限学校に必要なルールとは何か

「前へならえ・回れ右」のような軍隊式の規律教育が不要だという意見は、教育関係者には現場の事情を知らない外野の意見のように聞こえるかもしれない。

しかし、教育関係者も軍隊式の規律教育が本当に必要なのか、既成概念にとらわれずによく考えてみる必要があると思います。

それでは、義務教育で最低限必要な学校のルールとは何かを日本国憲法から考えてみましょう。

日本国憲法26条(教育を受ける権利、教育の義務)

1.すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
2.すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う。義務教育は、これを無償とする。

となっています。

これによれば、国は国民の能力に応じてひとしく教育を受ける権利を守る必要がある。ということになります。

つまり学校に必要な事とは、各人の教育を受ける権利を保障するために、教育を提供すると同時に、教育を受ける権利を邪魔しない(妨害しない)教育環境を維持することになるでしょう。生徒間のルールという意味では、ある人がある人の教育をうける権利を妨害しないということになるでしょう。

・授業中に、大声を出して授業を意図的に妨害すれば、他の子供の権利を邪魔してしまいます。
・いじめをすることで、いじめをされた子供が学校に通えなくなったとしたら、その子供の権利を邪魔しています。
・先生に暴言を言って授業が進まないとしたら、他の子供の権利を邪魔しています。

自分の教育を受ける権利を主張するのであれば他の子供の権利を妨害してはいけません。もし、それができないのであれば、できるようになるまで学校に来てはいけません。それが学校に必要な最低限のルールではないでしょうか

●その指針や校則が無いと他の子供の教育を受ける権利を守れないのか

そう考えると「前へならえ・回れ右」の集団行動指導が不要なのがよくわかります。これができなくても、他の子供の教育を受ける権利を妨害していません。

白い靴下指定とか、髪の長さの指定といった校則も不要でしょう。少なくとも他の子供の教育を受ける権利を妨害していません。

逆に、他の子供の教育を受ける権利を妨害するような行動や言動をしてはいけない。というルールは明文化し、それに対するペナルティも明確にすべきでしょう。それ以外は本来不要なのです。

●その指針や校則が教育を受ける権利を守るために必要かどうかでシンプルに判断すべき

教育を受ける権利は他の人の権利を同様に保障することで成り立つわけですから、他の人の権利を妨害する人はその権利を保障されない。つまり学校に登校することができない。というシンプルな判断で見直しが必要でしょう。

そのためには制度上の見直しも必要です。たとえば、現在の制度では、学校で先生に暴力を振るった等の理由で生徒を登校禁止にした場合には、放課後等の時間を使って先生が登校禁止にした生徒の自宅に出向く等して勉強のフォローをしなくてはならないことになっています。ただでさえ時間が足りない学校の先生方がそのような個別のフォローをするのは困難であるため、登校禁止にすることを学校がためらってしまうということもあるようです。

このような制度上の問題もあり、軍隊式の方法でも学校やクラスを統率して何とか全員を卒業させようという事にいつの間にかなってしまったのかもしれません。

また、義務教育での留年制度(習熟度別学年)が実質無いため、他の子供の教育を受ける権利を妨害する子供も何とか学校に通わせなくてはならないという面もあるかもしれません。このような制度についても見直しの土俵に上げて議論すべきだと思います。

●日本の「前へならえ・右向け右」的な学校の集団行動指導は果たして変わるのか

「前へならえ・右向け右」的な学校の集団行動指導はおかしいと、世界の状況を知っている知識人の中からも指摘されています。世界の民主主義・自由主義国の中でも異様な風景であるし、これを続けていたら日本は世界の潮流からおいていかれるという指摘です。全くその通りだと思います。

しかし、同じように認識している日本人は一部でしょう。現在のような学校の集団行動指導は必要だと思っている日本人が大半でしょう。いまだに事故が多いと指摘されている組体操を喜んで見ている人も多いし、学校に厳しい規律を教育してほしいと思っている人も多いでしょう。世界の民主主義国の中で見ても、おかしいよと言われてもピンとこないわけです。

そんな日本で、前へならえ右向け右的な学校の集団行動指導は変わるのでしょうか。

教育委員会や学校自体には変えるような積極的なモティベーションや理由はないでしょう。「ルールだから、決まっていることだから」といって生徒に号令をかけて指示を守るように言っておいた方が圧倒的に簡単でしょう。そもそも、それが生徒の思考力を落としているかもしれないとは全く想像もしていないでしょう。

現在学校に通っている生徒から、この校則はおかしいよね。という意見が学校に上がっても3年でみんな卒業してしまうので、継続的な変化を生む力にはならないようです。

変える方法があるとすれば、立法府・行政府が「これは変える必要がある」と判断して法律や政策を打ち出すということになるのでしょう。しかし日本国民の多くがおかしいことだと思っていない(単におかしいことだと気が付いていない。気が付かないようにされている)状況の中では、特に強い動きにはならないかもしれません。

こう考えると、「前へならえ・右向け右」の学校の集団行動指導のあり方は、簡単には変わらなそうです。けっこう時間がかかりそうです。それでもいろんな人が声を上げることで、確かにそうだよなーとか、変えた方がいいよねと思う人が増えれば、少しずつ、新しい変化や潮流になるかもしれません。

何十年かしたら「昔は前へならえ、回れ右」とかやっていたんだよね。その当時の人は何を考えてそんなことをしていたんだろうね。信じられないねということになっていても不思議ではありません。もし、そう思うのであれば早めに変えた方がよさそうです。

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