●ビジネスコンサルタントの細谷功氏の著書
「会社の老化は止められない。宿命にどう立ち向かうか」




細谷氏が20年以上にわたって経験した会社という生命体に対する観察結果の集大成というこの本。
現在の日本の多くの会社や組織の有り様をわかりやすく浮き彫りにした傑作。

大雑把に言うと生まれて成長した企業がどういうプロセスを経ていわゆる大企業病に陥っていくかいうこと。そして大企業病から脱却する方法はあるかという話です。

出版後に何人の読者から「これうちの会社のことですよね?」といわれたり、行ったこともない会社の人から「うちの会社、取材したんですかね?」と言う声をもらったという。
思わず自分が関わっている会社や組織の事をイメージしてしまうのだろう。

またこの本の文庫版は日本経済新聞出版社から出版されているのが面白い。日経新聞が常日頃取材している企業で目にしていることがうまく書かれているということでしょうか。
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●会社は人間と同様に老化する。

本書の中のキーメッセージ
会社は人間と同様、生まれた瞬間から老化の一途をたどり、決して若返ることはない。


人間と同様に会社という組織体も老化する現象は避けることができないということだ。

それに伴って老化する過程で共通した現象があらわれる。
こんなところだ

・変化に抵抗し、それまでの習慣に(根拠もなく)固執する
・一度得たものは手放せない(なければないで何とかなるにもかかわらず)
・期待値(という「合理的な損得」)ではなく、リスクの大きさに反応する
・手段が目的化する
・縄張り意識を持つ
・ルーチンワークの増加
・非効率な定例会議の増加
・顧客サービスより自社組織
・全体像の喪失(俯瞰力の低下)
・「目に見えるもの」だけから発想

とても「あるある」の現象だ。、著者によれぱこれは会社という組織の避けることができない老化現象なのだという。

そして老化が行きついた先に起こる現象として

・会社のなかであらゆる「数」が増えていく。
「増やすことは簡単でも減らすことは難しい」
・承認者の増殖
・リモコンボタンの増殖(過剰品質化)
・部門や階層の細分化
・会議の肥大化
・無駄な「ほうれんそう」の増加
・「証拠づくり」のための仕事の増加
・「いいだしっぺ」が損をする負のサイクル

が発生するという。

そしていきつく先が、組織の停滞、老化そして競争力を失っていくというわけだ。

もちろん例外はあるかもしれないが、多くの日本の会社・組織の中で起こっていることを見事に描き出している。これがこの本のすごさである。
ここまで見事に描き出している本は日本ではなかなかお目にかかれない。

●会社は老化にどう立ち向かうか

そして会社・組織としてどう対処すればよいかということも述べられている。

①老化を運命として受けていれる。
老化現象なので「必要な抵抗」はしても「無駄な抵抗」はしない
②老化をリセット
会社そのものをリセットする。
③眠れるイノベーターを活用する。

対処については、会社の老化は避けられないという前提に立っているので
②③は自力では無理。新たに生まれた子供に託すというイメージ。
①は遅らせることはできるが抜本的には避けられないということになります。

要するに人間といっしょで会社の老化現象を全く食い止めることはできないと言う結論なのでしょう。
特効薬は今のところないということでしょう。

●それではこの本をどう活用するか

会社や組織を若返らせる方法は無くても、細谷氏が明らかにした会社の老化現象を知ることは、自分の身の回りで起こっている出来事や現象を俯瞰して理解するのに大変役に立ちます。
会社や組織に属している人はもちろん、そうでなくても現代の社会で生活している限りなんらかの接点は誰もがもっているはずです。

会社や組織に関わって仕事をしている人にとっては、日々の仕事の中で変だなとかおかしいなと思う事。なぜ会社や組織でそんな事が起こるのか、ということがあると思います。

自分の仕事や身の周りで起こっていることだけを見ていてもよくわからない。高いところから俯瞰して見ると「そういうことか」と理解することができるわけです。

会社や組織が老化することを知らずに闇雲にもがいている人もたくさんいる気がします。それを知るだけでも自身の視点は相当変わるでしょう。

俯瞰して見ることができると、さあ自分はどうしようかということを高い視点から考えることができるというわけです。

高い所から俯瞰して見ているだけですから、
もちろん答えが書いてあるわけではありません。
・会社の老化現象を受け入れて無駄な抵抗はやめる
・なんとか会社を活性化させようとする
・さっさと古い組織に見切りをつける  etc
方法はいろいろあります。

コーチング的な観点で見ると、それは自分のゴールと関係あるかどうか。ということで判断するということになりますが、自分がどうしていくかは自分で決める。それを考える一助にはなるのは間違いありません。


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